論文の読み方

 

 一部の学者にしかわからないような、ジャーゴンに満ちあふれた論文は、決して、よい論文ではない。基礎知識と論理的な思考力があれば、誰にでも読める、そのような論文がよい論文である。

 とはいえ、完全な日常語で論文を書くことは、不可能ではないにしても、とても難しい。適切な専門用語を用いれば、冗長な説明を省くことが可能となる。その意味では、(ある程度)専門用語を理解することも必要となるし、論文読解を通じて基礎知識を身につけることも大切である。場合によっては、各種の辞典・事典・用語集を参照することも必要となるだろう。そのようにして、論文の内容を正確に理解すること、それが論文読解の第一歩となる。便宜的に、そのような読み方をロジカル・リーディングと読んでおく。

 だが、このレベルの読解に止まっていては、論文を読んだとは言えない。既に述べたように、論文とは、その人の考えが書かれた文章である。よって、その人の考えが理解できたところで、その考えに対する自分の考えを示していくような読み方が必要となる。すなわち、創造的な読解(クリエイティブ・リーディング)が求められるのである。

 演習でテキストを読む場合、私はまず、ロジカル・リーディングができているかどうかを確認する。英文であれば、まず、単語、文法、構文レベルでの疑問を解消していく。筆者の主張が理解できたところで、その主張に対してどう考えるか、それを参加者に確認していく。

 後者が苦手な学生は多い。どうすればロジカル・リーディングができるようになるのか? それを考えていかねばならない。